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    • 2019.06.25 Tuesday
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    護憲派のガセ本(3)

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       さて、以上述べてきたような、これまでに明らかになっている史料の様々な証言に基づくならば、他に何の裏付け証拠もない平野三郎作「幣原聴取書」(以下、「平野「聴取書」」と略す)の内容は到底信用することができないと言わざるを得ない。しかし、平野「聴取書」を信用する人々が、これこそが真実だと言い張るならば、決着のつかない水掛け論争となる以外にないのだろうか。ところが、そうではない。
       
       前回述べたように、平野「聴取書」によると、幣原が憲法9条の戦争放棄条項を思いついたのは、45年の暮れから46年の正月にかけて、風邪をひいて寝込んでいたときで、当時、マッカーサーは天皇制を存続させる意図を持っていたが、豪州やニュージーランドなどがソ連とともに日本の再軍備と天皇制の存続を恐れていることが、アメリカを厄介な立場に追い込んでいたため、「天皇の人間化と戦争放棄を同時に提案すること」を思いついた、という話であった。しかしながら、幣原が45年末〜46年正月の時点で、マッカーサーの天皇温存意図や、極東委員会におけるソ連・豪州・ニュージーランドなど連合国の意向を知っていたとは到底思われない。いや、仮に前者の意図はある程度知っていたとしても、後者については、この時点で知りえたはずがないのである。というのは、対日占領政策の決定機関として極東委員会の設置が決まったのは、451227日、モスクワで開かれた米英ソ3国外相会議においてであって、極東委員会の第1回会議がワシントンで開かれたのが46226日であり、その準備会合などが開かれたのは、早くても461月になってからと考えられるからである。実際に、日本政府が極東委員会における連合国各国の意図を初めて知るのは、213日、吉田・松本らの日本政府代表がGHQから憲法改正要綱(松本案)の受け取りを拒否され、逆にGHQ草案を手交された際であったと考えられる。このとき、ホイットニー民政局長は、こう述べている。

       「あなた方がご存知かどうかわかりませんが、最高司令官は、天皇を戦犯として取り調べるべきだという他国からの圧力、この圧力は次第に強くなりつつありますが、このような圧力から天皇を守ろうという決意を固く保持しています。……しかしみなさん、最高司令官といえども、万能ではありません。けれども最高司令官は、この新しい憲法の諸規定が受け容れられるならば、実際問題としては、天皇は安泰になると考えています。」

       仮に、幣原首相自身は、124日のマッカーサーとの会談で、極東委員会における状況を伝えられていた(が他の閣僚には秘匿していた)ということがありえたとしても、1月初旬の時点で、幣原首相がそうした事情を把握したうえで、戦争放棄条項(9条)を思いつき、124日の会談で自らマッカーサーに申し入れた、ということは、ほとんどありえないことに思われる。

       しかし、それ以上に、決定的にありえないのは、幣原首相が12月末の時点で「天皇の人間化と戦争放棄を同時に提案することを思いついた」ということである。なぜなら、天皇に「人間宣言」を出させることを考え付いたのは、GHQ側であり、具体的に「人間宣言」の最初の草案を書いたのは、GHQのヘンダーソンCIE(民間情報教育局)教育課長であり、その時期は4512月初旬であったということまでわかっている。高橋紘・鈴木邦彦の『天皇家の密使たち』(文春文庫)によれば、ヘンダーソンは、学習院教師ブライスの示唆を受けて「人間宣言」の草案を起草したのち、ダイクCIE局長およびマッカーサー元帥の承諾を得たうえで、山梨勝之進学習院院長と浅野長光事務局長に日本語訳を依頼している。その後、浅野は山梨の指示で吉田外相に草案を手渡し、吉田から幣原首相に草案が渡っている。幣原首相は1224日、幣原首相は天皇に会って、暗黙の了解を得た後、福島慎太郎・秘書官に翻訳させたが、その後、幣原は風邪をこじらせて急性肺炎となり、代わりに前田多門文相が28日、天皇の了解を求めたところ、天皇は「五カ条の御誓文」を加えることを要請、前田が冒頭に御誓文を加え、最終的に、4611日に発表された「人間宣言」となったのである。
       
       したがって、幣原首相が12月末に風邪で寝込んでいたときに、天皇の人間化と戦争放棄をセットにする案を思いついた、などということは、歴史的事実に反してありえない以上、平野「聴取書」は平野自身による作文=「捏造文書」であった、という結論になるのである。

       

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